「自作のサンプルを着ていただいて、写真を撮らせてください!」
このような自己中心的な呼びかけで、大阪の梅田の写真スタジオにお集りいただく。
集まってくださった女性3人の前にサンプルを並べ、
各々「着たい」と思うものを着ていただいて写真撮影を実行した。
お集りになった女性3人は、それぞれ身長、体型がバラバラである。
各々の職業柄の違いもあり、醸し出す個性も全く違う。
用意した服(テーラード)はワンサイズ(9号サイズぐらい)のみ。
試行錯誤を重ね、微妙に寸法バランスが異なるものを用意した。
既製服やイージーオーダーとは違い、ビスポークという最高級のオーダー仕立てなので、
1着あたりの製作に70~80時間を要するしろもので、簡単にサイズ展開をして作成とはいかないのがワンサイズの理由である。
このブログは、ドキドキしながら実験に臨んだ記録である。

<ネイビー、ドットストライプジャケット>

オーバーサイズと体型の為、首が抜けて前丈が大きく下がっているのは目を瞑っていただきたい。
サイズは合っていないが、雰囲気は伝わる。
2サイズ程大きいが、「紳士用の生地」と「紳士用の仕立て」のカバー力の賜物である。
モデルさんには己の実験に付き合って、着ていただけただけで感謝である。

ありそうでないタイプのレディーススーツ。
オーダースーツの最高峰と呼ばれる「ビスポーク仕立て」のサンプルで、
着用する方に「高揚感」を感じていただけたら「合格」である。

単にメンズをアレンジしたレディースではなく、
「明確にレディース用のジャケット」であることが、肩から胸にかけての曲線で証明している。
紳士服地屋の店主のおじいさんから購入した生地が、こんな形で生まれ変わった。
テーラーの技術の無限の可能性に、我ながら驚愕する。
<サマーウール、透けるジャケット地>

流れるような滑らかなシルエット。
見ていて清々しい。
あくまでも個人的な感想だが、「グレー」は士業の方に不思議とマッチする。
「グレー」は控え目で上品、人のサポートに優れるといった特徴から、士業と親和性が高く感じられるのかも知れない。

着る人の体型が変われば「違ったもの」に見える。
サンプルなので、出来るだけ多くの方々にフィットすることを考えて設計したパターン。
ジャケットが、被写体の方のダイナミックなボディに追従している。
上手くはまって、設計者としての自分の技量に自信が持てた。
<クリーム色、フレスコ地ジャケット>

小柄にも関わらず「普通サイズ」を無理やり着ていただいたが、この写真はまだ「ガバガバ感」が薄い。
だが通常のレディースでオーバーサイズだと、多くのシワが出る筈だが出ていない。
誰が気にするねん!というマニアックなポイントだが、着目していただきたい。

狙ったラインが出ていて嬉しい。
滑らかな曲線美と躍動感。
きっちりしたテーラードだが真面目一辺倒にならず、モード系の自由さを併せ持つ。
この独自性を失いたくない。
人に着ていただくことで、狙ったラインの「答え合わせ」ができた。
<黒ホップサック、ダブルジャケット>

オーバーサイズ(2サイズぐらい)でシルエットは分かりづらいが、
毛芯というウールの芯に裏打ちされた前見頃は健在である。
大きなタックが入っているパンツとの組み合わせも以外と合う。
自由度の高いレディースらしく、コーディネートの可能性が広がる。

「教鞭をとる先生」を具現化したようなスタイル。
インナーとボトムはモデルの方々の私物であり、こちらからは何も指示をしてはいないが、
その方の個性をダイレクトに表していて、見ていて面白い。
ホップサックという生地はビジネス、カジュアル、両方に使え、極めて汎用性が高い。
丸味を帯びたレディースジャケットには最適だと認識している。
<グリーン、シャンブレージャケット>

オーバーサイズ(2サイズぐらい)で大変申し訳ない想いをさせてしまったが、
フロントは余計なシワもなくいい感じで安心する。
グラフィックデザイナーらしい、自由度の高さをご本人が醸し出されている。

目を引くグリーン地であっても落ち着いて見えるのは、
着用者、ご本人の職業柄からくるものなのか。
個性によるものなのか。
きっとご本人の内面によるところが大きいのでは?と勝手に推測している。

自作のジャケットの最大の特徴である「曲線美」がきっちり出ていて嬉しい。
男性には少し派手な紳士服地が、こんな形で活きるとは。
この生地を企画した人達の想像の斜め上を行ったと、内心ガッツポーズのショットである。
<3人バラバラのモデルさんに着ていただいて>
サンプルを用意して、既製服ならプロのモデルさんに着ていただくのが一般的である。
しかしオーダーの場合、普通の人達がモデルになることで、見る方々にとって「現実味」が増すのではないか?
そんな意図で、3人それぞれ身長、体型がバラバラな方々で「サンプル撮影会」を企画した。
オーダーの中で最も高い技量が必要とされるビスポークスーツ。
何一つピン打ちをしない状態でも、サンプル一つでここまでのことはでき、着用者の方、また画像を見て下さる方に「未来提示」を感じとってくだされば、この企画は成功である。
サンプル試着撮影会とは名ばかりで、単なる自作の実験台となってくださった、
今回お集りいただき、顔出しで写真を撮らせてくださった3人のモデルの方々には感謝しかない。
どうもありがとうございました(≧▽≦)
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